『ルドルフ』フレデリック・モートン
世の中(?)はすでに『ミス・サイゴン』のプレビューも終わって、初日だというのに、今更『ルドルフ』の”原作”のおさらい(汗)。
もういっそ、タイトルを「ミスサイゴン初日記念「ルドルフ」の読了感想」とでもするか![]()
一応読了したのは、『ルドルフ』の千秋楽直前ぐらいでした。
って事は、実は読了から1ヶ月以上たってしまったのでそれほど記憶鮮明じゃありません![]()
だったら、わざわざ書かなくても、な感もなきしもあらず、ですが、記録ですので。
まずは、この原作を途中までだろうと手に取り、読んだ人は皆、感じたと思うのですが
「どの辺りが"ミュージカル『ルドルフ』"の原作なんでしょうか」
です。
確かに、主人公は同じ人物です、皇太子ルドルフです。そして、意味ありげにファイファーも登場してます。
そして、史実ですから物語の根っこも一緒です。
ですが、それしか共通点は無いかも……
この著作が原作だというのなら、ルドルフの人生が述べられていた本であれば、何でも原作にすることができるんじゃないかってぐらい。
ミュージカルの脚本家OR企画者はこの本を読んで作品を考えた、というよりは、先にルドルフを主人公にミュージカルを作ろう!ってアイディアありきで、でも有名な「うたかたの恋」ではもう映画から何から、いろいろ作られているから、別な本を探そう、あ、これで良いや!的な原作じゃなかろうかと。
ということなので、何が一番苦しいって、そりゃ邦題です。
原題は"A Nerbous Splendor"
邦題は『ルドルフ ザ・ラスト・キス』
明らかに趣旨から外れた邦題で、原作とうたったミュージカルのためにつけたタイトルです。
ミュージカル作品が定番物になれば良いけど、この先、この本が貴重な歴史資料として残っていくためには、いずれ改題されるんだろうなぁ……
本の中では、舞台以上にウィーンの町に蔓延していた閉塞感が述べられています。様々な当時のウィーンにいた著名人、すでに著名だった人物、後年に著名になる人物取り混ぜて、おそらく、それらの人々の日記や書簡から集められただろう日常が丁寧に描写されています。
また、名のある人物だけでなく、ファイファーを代表とする市井の人々の生活の描写もあります。
それらが、問題の10ヶ月間の時系列の中で述べられ、そしてその時のルドルフの行動などもまた並行して書かれていきます。
興味深い話ではあるものの、そういう構造なので、登場人物が多すぎて時々、はて、誰だっけ、となりそうなのが厳しいです。
また、小説、物語と言ったものというよりは、記録ものなので普通の小説のつもりで読み進めようとすると、これまた難しかったです。つまらない、とかではないのですが、慣れてない。
そんなわけで、普段は寝食仕事もほったらかしてさっさと読む私ですが、遅々としてなかなか読了せずにいたのも事実。
読み終わってみると、発見もいくつか。
たとえば、ファイファーのラスト、とかは、あれ、違うじゃないと。
あと、自殺したはずのルドルフがなぜちゃんとお葬式も挙げてもらえるんだろう?離婚はできなかったのに、ってのがずっと別な作品を通しても疑問でしたが、その疑問は解けました。
脳に何らかの障害や病気があって、そのために自殺を実行してしまった場合は、免罪(?)なんですね。
なので、死後に脳の異常が発見されたという検死記録を作れば(本当に異常があったかどうかはねぇ、そりゃハプスブルクだもの捏造とかも可能でしょ)、ちゃんと葬式は出してもらえるということだったのです。な~るほどね、でした。
もちろん、生前の日々の様子からも精神状態が健康的ではなかったのは明らかだけど、ルドルフはおかしかったってのは、この辺りのことも記録として残っているから言われるのかな?ともちょっと疑問に感じてみたりもして。モルヒネとアルコールを同時にやってたらしいから、脳も精神も壊れるのは当然かもしれないけど。
そして、一番の発見、というか、ああ、そうだね、と思ったのは最後の章に書かれていたこと。
ついに事件は起こり、ルドルフは死んでしまった、オーストリアは近代化への貴重な人材を失い、ヨーロッパは戦争を避けるチャンスを逃したのかもしれない。ってのは、よく言われること。
ルドルフの考え方が広まっていれば、第1次世界大戦は防げたかも知れないというのはよく言われています。
ですが、「もしも、ルドルフが生きていたなら」には別な側面も実際はあるということ。
たとえば、「もしも、ルドルフが生きて皇帝の座についていたら」というのは、いったいいつのことになったのだろうか?結局フランツ・ヨーゼフは長命でその後27年生きているのだ。31年で閉じられた人生に匹敵する長さ、まだ待たなければならなかったのだ。そんな時間を本当に待てるだろうか?
そういう意味では、この時じゃなかったとしても、マリーと一緒じゃなかったとして、結局はこの道を辿るか、あとは父親を自分の国を裏切るような行為をするしかなかったのではないのか。死だけが、彼が選べる道だったのかもしれないと。
そして、歴史の中のもしもで、本当にヨーロッパは戦争から無縁でいられたのだろうか?短期的にはYesだろうけれど、長期的には保証の限りではないだろう。自由主義や技術の進歩は夢だけを運んでくるわけではなく、新たなしわ寄せも現実の20世紀~に見られているが、そういうことにルドルフは対処できたのだろうか。
なかなか読み進むのには時間と手間が掛かりましたが、読了後には今までとまた違った視点を得ることができて面白かったです。ミュージカルの中身とはあまり関係なかったけど(汗)。
まぁ、でもこういうきっかけがなければ手にしてないかも、という意味では、良い機会を得たということでしょう。








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